特攻!MISTERY−SPOTS.
約束
投稿者 sera 様
駅の改札を出た時は、パラパラと小雨でした。
運良く傘を持っていたので、迷うことなく、勢いよく歩き出しました。
今は大きなマンションが立ってしまいましたが、その当時、そこは空き地でした。
犬を散歩させたり、ジョギングをしたりと、夜でも結構人通りがありました。
が、その日にかぎって、歩いているのは私ひとりでした。
空き地の脇を半分ほどすぎた頃には、結構激しい降りになっていました。
唐突に後ろから「ねえ・・・ねえ・・・○○ちゃん?」と声をかけられました。
呼んだ名前は私ではなかったので、振り向かずやり過ごそうとしたとたん、
「ねえ。」と肩をつかまれました。
ビックリして振り返ると、年の頃は30少し前でしょうか?女性でした。
身なりは、品の良い奥様という感じでした。
「どちらさまでしょうか?私、○○さんではありませんが。」
その女性は、私をジッと見て「いいえ。あなた、忘れてしまったの?約束したじゃない。」
穏やかな口ぶりではあるが、どこか威圧的な怖さがある。
「あなた、△△に住んでいた△△小学校の校長先生の息子でしょう?」
ますます怖い。
どこをどう見たって、男には見えないでしょう?
それに私は二人も子供がいる普通の主婦だし・・・
笑っていいのか、怒っていいのか、思案していると、
「もう、何年も、何年も、ずっと待ってたのよ。お願いだから・・・」
「だから・・・」の「ら」は、もう、聞き取れませんでした。
その女性は、足元から砂が崩れるように、消えてしまったのです。
仕立ての良い、シルクの白いブラウスに、スリットの入ったビロードのタイトスカート。
肩までの少しカールのかかった髪。
こんなに雨が降っているのに、彼女は少しもぬれていなかった。
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